TOPコラム“既存不適格建造物”と“違法建築物”はどう違うのか?

“既存不適格建造物”と“違法建築物”はどう違うのか?

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建築物と一口にいっても、その種類はさまざまです。
また、中には言葉の意味が似通っていることから、違いを区別するのが難しかったり、間違って認識しやすかったりするものもあります。
それが、“既存不適格建造物”と“違法建築物”です。
今回は、これら2つの異なる点について解説していきたいと思います。

①違法行為をしているかどうか

既存不適格建造物と違法建築物の大きな違いとしては、まず“違法行為をしているかどうか”が挙げられます。
既存不適格建造物とは、建物を建てた時点では、建築基準法等の規定をクリアしていたものの、現在は法改正等によって、規定をクリアできなくなったものを指します。
所有者の違法行為によって、規定を満たせなくなったわけではないというわけですね。
一方、違法建築物とは、建てられた時点ですでに法律の規定をクリアしていなかったもの、もしくは建築後の違法行為(増改築等)により、規定をクリアできなくなったものをいいます。
つまり、故意であろうがなかろうが、違法行為が行われていれば違法建築物、法改正あるいは都市計画の変更により、強制的に規定から外れていれば既存不適格建造物に該当するということですね。
これは非常に大きな違いであるため、覚えておきましょう。

②ローンが利用できるかどうか

不動産を購入する際は、大半の方が住宅ローンを利用しますよね。
ただ、対象物件が違法建築物の場合、かなりの確率で住宅ローンの審査は通りません。
これは、“検査済証”が存在しない建物については、基本的に融資できないという金融機関のルールがあるからです。
検査済証とは、建築物自体やその敷地が建築基準関連規定に適合していることを証明する書類をいいます。
違法建築物は、規定に適合している建物ではないため、当然この検査済証が存在せず、それが理由で融資対象外となってしまうわけですね。
一方、既存不適格建造物は、基本的には購入時の住宅ローンを利用できます。
なぜなら、このような物件には、数十年前に建てられたものも多く、当時はあまり検査済証を受け取るという慣習がなかったからです。
もちろん、買主の属性等にもよりますが、既存不適格建造物購入時、ローンを利用する場合は、検査済証に代わり、台帳記載事項証明書等を取得することで、ほぼほぼ審査に通過するでしょう。

③すぐに改善しなければいけないかどうか

既存不適格建造物と違法建築物には、“すぐに改善しなければいけないかどうか”にも違いがあります。
これらの物件は、プロセスは違うにしろ、どちらも法律の規定を満たしていない物件です。
ただ、状況をすぐに改善させ、建築基準法に適合させなければいけないのは、違法建築物の方です。
具体的には、是正命令に従い、建物の違法となっている部分を除去する必要があります。
もし、この命令に従わずにいれば、懲役もしくは罰金という処分を受ける場合もあります。
れっきとした法律違反ですから、これは致し方ありません。
一方、既存不適格建造物は、命令があったらすぐに改善しなければいけないものではありません。
大規模な増改築や修繕、模様替え等を行う場合に、現在の法律に適合させればOKです。
法律に適合していないとはいえ、違法行為によって生まれた建物ではありませんからね。

双方の共通点は?

では、逆にこれらの2つの建物には、一体どのような共通点があるのでしょうか?
違いを知るなら、こちらも併せて知っておく必要があります。

①売却時に告知義務が発生する

既存不適格建造物と違法建築物の共通点としては、まず“売却時に告知義務が発生する”ということが挙げられます。
現時点で法律の規定をクリアしていない建物だということは、買主にとって非常に重要なことなので、これは当然ですね。
もちろん、告知しなかった際には大きなトラブルに発展する可能性が高いため、どちらを売却する際も、告知に関しては決して忘れてはいけません。

②売却時に苦戦しやすい

これらの2つの建物の共通点には、“売却時に苦戦しやすい”ということも挙げられます。
違法建築物の場合、買主に告知をしたところで、「はい、そうですか」と簡単に購入してくれる可能性は低いです。
もちろん、違法建築物という大きなマイナスポイントがあるわけですから、売却価格・資産価値はともに下がります。
そもそも、違法建築物の購入には住宅ローンがほとんど利用できないため、買い手がまったく現れないことも考えられますね。
一方、既存不適格建造物も、かなり多くの制限がある建物です。
増改築あるいは建て替えの際には、現在よりも建物面積を小さくする必要があるため、これが買主にマイナスなイメージを与える可能性は大きいでしょう。

まとめ

ここまで、既存不適格建造物と違法建築物、双方の違いを中心に解説してきましたが、いかがだったでしょうか?
いつの間にか法改正が行われていたり、検査済証がどこにもなかったりする場合、皆さんの所有する物件は、既存不適格建造物もしくは違法建築物かもしれません。
不安な方は、今後のためにも早急にチェックするべきです。
再建築不可物件や市街化調整区域についてのご相談は、日翔レジデンシャル株式会社にご相談下さい。
親身になって対応させて頂きます。