TOPコラム瑕疵担保責任”と“契約不適合責任”は何が違うのか?

瑕疵担保責任”と“契約不適合責任”は何が違うのか?

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2020年4月1日、約120年ぶりに民法改正が行われ、これまで不動産売買で適用されていた“瑕疵担保責任”という制度が、“契約不適合責任”という制度に生まれ変わりました。
ただ、民法改正の事実は把握していても、これらの制度の違いを把握している方は、それほど多くないでしょう。
今回は、具体的に双方の違いを解説します。

なぜ民法改正が行われたのか?

そもそも、なぜ瑕疵担保責任が廃止され、契約不適合責任という新たな制度が設けられたのでしょうか?
その理由は主に以下の2つです。

・わかりやすい民法にするため
・時代に合わせた民法にするため

わかりやすい民法にするため

以前の民法では、日常であまり使用されない専門用語が数多く使用されていました。
これは瑕疵担保責任にも言えることであり、“瑕疵”という言葉を読める方、意味を理解している方は少なく、今後も当制度の名称や民法の記載内容をそのままにしておくことは、好ましくないと判断されたのです。
よって、制度の名称を変更し、内容に関してもわかりやすいものに変更することを目的の1つとして、今回の民法改正は実施されました。

時代に合わせた民法にするため

以前の民法は、ハッキリ言って時代遅れの内容です。
例えば、瑕疵担保責任における買主の権利は契約解除と損害賠償請求しかなく、行使できるシチュエーションも限定的でした。
また、瑕疵担保責任は買主が不利になる点が多く、このままでは不動産売買契約の安全性が危ぶまれるということも、今回の民法改正に至った理由の1つだと言えます。

瑕疵担保責任と契約不適合責任の違いは主に5つ

旧制度である瑕疵担保責任と、新制度である契約不適合責任の違いは、主に以下の5つです。

・買主の権利
・適用期間
・損害賠償の範囲
・損害賠償の請求要件
・権利行使の期間

買主の権利

瑕疵担保責任は、売買された不動産に欠陥があった場合に発生する売主の責任です。
売買契約の時点で、買主が知らない欠陥が不動産に存在し、それが後々発覚した場合に、売主は責任を負わなければいけません。
また、買主はこのとき売主に対し、契約解除や損害賠償請求という権利を行使できますが、契約不適合責任では、さらに以下の2つの権利行使が可能になっています。

・追完請求
不動産の種類や品質、数量などに問題があった場合に、補修や代替物の引き渡し、不足分の引き渡しを請求できることをいいます。

・代金減額請求
上記と同じ場合に、買主が売主に代金の減額を請求できることをいいます。
まず追完請求を行い、売主がそれに応じないときに行使できる権利です。

適用期間

瑕疵担保責任の対象となる瑕疵の範囲は、“売買契約の時点で存在していた瑕疵”のみでした。
もちろん、これには“契約~引き渡しまでの間に発生した瑕疵”は含まれていません。
つまり、従来の制度において、買主はこの期間の瑕疵における責任を追及できなかったというわけです。
一方、契約不適合責任は、契約~引き渡しの間に発生した問題にも適用されます。
よって、買主がトラブルに巻き込まれる可能性はより減少しています。

損害賠償の範囲

瑕疵担保責任における損害賠償の範囲は、“信頼利益”に限定されていました。
これは、契約を有効と信頼したために失った利益を指しています。
例えば、有効な不動産の売買契約と信頼したためにかかった、その物件を見に行くための費用などは、信頼利益にあたります。
一方で、契約が有効だった場合に得られたはずの利益を“履行利益”といいますが、これは瑕疵担保責任における損害賠償の範囲外となっています。
契約不適合責任は、上記2つの利益が損害賠償の範囲に含まれているため、買主はより多くの損害賠償を請求できる可能性があります。

損害賠償の請求要件

瑕疵担保責任は“無過失責任”であったため、買主は損害賠償の請求要件をクリアするのが
容易でした。
無過失責任とは、故意・過失がなくても責任を負わなければいけないことをいいますが、契約不適合責任は売主が知っていたにも関わらず、隠していた問題にのみ、損害賠償請求ができるというルールに変更されています。
このルールに関しては、買主にとって少し不利な点と言えるでしょう。

権利行使の期間

瑕疵担保責任における買主の権利は、不動産の引き渡しが終わって1年の間に行使しなければいけませんでした。
一方、契約不適合責任の場合、権利の行使ではなく、“通知”を1年以内にしていれば、実際行使するのは引き渡しから1年以上過ぎた後でもOKというルールになっています。
これにより、買主は実質長い権利行使の期間を得ることになりました。

まとめ

ここまで、旧制度である瑕疵担保責任、新制度である契約不適合責任の違いについて解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
今後、不動産売買を行う可能性がある方は、今回解説した知識が必須になるため、この機会にぜひ覚えておくことをおすすめします。
多少複雑な部分もあるかもしれませんが、全体的に買主が有利になり、不可解な点も少なくなったと認識できていればOKです。
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