TOPコラム再建築不可物件における“敷地設定”のポイントについて

再建築不可物件における“敷地設定”のポイントについて

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再建築不可物件での建て替えは、接道義務を満たすことで可能になります。
ただ、隣地を購入したり、賃貸したりすることができない場合、なかなか建て替えの計画は進みません。
そんなときに検討したいのが、“敷地設定”という選択肢です。
今回は、敷地設定におけるポイントについて解説しましょう。

敷地設定の概要

再建築不可物件において、隣地を購入したり、賃貸したりすれば、間口が広がって接道義務をクリアできることがあります。
また、隣地を自身の所有地(敷地)として建築確認申請をし、問題ない土地であることを自治体に認めてもらうことでも、結果としては接道義務をクリアしたという扱いになります。
この場合における、“隣地を自身の所有地(敷地)として建築確認申請をする”という行為を“敷地設定”といいます。
つまり、他人の土地を利用させてもらい、再建築可能な状態にする方法ということですね。
隣地を利用するという点では、賃貸と似たようなところもありますが、敷地設定はあくまで建築確認申請のための利用であるため、賃貸のように隣地の所有者に賃料を支払うことはありません。
ちなみに、敷地設定は、建築基準法において“自身の所有する土地にしか建物を建築してはいけない”という規制がないことから、正式に認められている方法です。

敷地設定のメリット

敷地設定のメリットと言えば、やはり再建築可能にするためのコストを節約できるという点でしょう。
例えば、セットバックや隣地の購入、賃貸には、当然工事費や購入費用、賃料等がかかりますが、敷地設定はこれらの費用を必要としません。
隣地所有者の許可を得た上で建築確認申請を行い、自治体のOKが出れば、特に大きな費用をかけずに実行できます。
また、1度敷地設定すれば、図面の書き換えを行うだけで、再建築不可物件利用の選択肢が広がるというところも魅力的ですね。

敷地設定を実施する際、注意すべき点は?

前述の通り、敷地設定は非常に安価で魅力的な手段です。
ただ、実施する際は、必ず隣地所有者(土地を利用させてもらう方)の許可を取らなければいけません。
また、隣地所有者側から見ると、敷地設定をされても土地を失うわけではありませんが、関係が良好でない場合や、あまり面識がない場合、断られてしまう可能性もあります。
この場合、隣地所有者の意思を無視して敷地設定をしてはいけません。
なぜなら、それが“不動産侵奪罪”という犯罪に該当してしまう可能性があるからです。
“侵奪”とは、他人が不動産を占有することを妨害・排除して、事実上自分の占有下に置く行為を指し、これに敷地設定が当てはまる可能性があるというわけですね。
ちなみに、敷地設定実施時の注意点はもう1つあります。
それは、隣地所有者と書面を交わしておくということです。
もし、同意書等の書面を交わしていなければ、後から「そんなことは許可していない」と言われたり、相続によって隣地所有者が変わったときに、断られたりしてしまう可能性があるからです。

トラブル事例について

ここからは、実際過去に発生した敷地設定におけるトラブル事例を見ていきましょう。

①勝手に敷地設定をしたケース
再建築不可物件を所有するAさんは、接道義務をクリアするため、敷地に接する私道の所有者Kさんに敷地設定を打診しましたが、これをKさんは許可しませんでした。
しかし、Aさんは勝手に敷地設定をし、建築許可申請をしてしまったのです。
後々、無許可で自身の所有地を敷地とし、建築工事をされていることに気づいたKさんは、区に対して建築確認の取り消しを求め、これは認められました。
また、これに対しAさんは、建築できなくなったことを不服とし、地方裁判所に提訴しましたが、認められませんでした。
つまり、Kさんの主張が通ったのです。
AさんとKさんの面識は、それほどなかったとされているため、このケースでは、事前に関係性を構築していれば、敷地設定の打診を断られずに済んだかもしれません。

②敷地境界に関するルールを守らなかったケース
再建築不可物件を所有するSさんは、居住する自治体のルールに則り、敷地境界を縁石等で明確にした上で、接する私道を利用した敷地設定を行いました。
後々、建築許可を得ることに成功しましたが、実際Sさんは建築工事が完了した時点で、縁石を設置していませんでした。
これにより、建物の建築はできたものの、“利用”は認められなかったのです。
つまり、敷地設定を用いた建築自体は完了していましたが、その物件に住むという目的は達成できなかったというわけですね。
このような敷地境界に関するルールは、自治体ごとに定められているため、敷地設定をする際はしっかりルールを確認し、遵守しなければいけません。

まとめ

ここまで、再建築不可物件での建て替えにおける選択肢である“敷地設定”について、詳しく解説してきました。
今後、再建築不可物件を活用する予定があるという方は、十分実施する可能性があるため、今回解説した内容は覚えておきましょう。
また、実際行う際は、事前に隣地所有者に許可を取り、ルールを確認することも忘れてはいけません。
再建築不可物件や市街化調整区域についてのご相談は、日翔レジデンシャル株式会社にご相談下さい。
親身になって対応させて頂きます。